悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
カウンター席で、ノンアルコールではあるけどカクテルを飲んでるなんて、なんだか大人になった気分だ。

現実を忘れて、この雰囲気に酔いそうになっていると。


「で? 何でプチ家出なんかしてるわけ?」


カウンターに両手をついて、柳が問い掛けた。

そうだった、それを言わないとね……。

甘いカクテルを一口飲んで、あたしはさっきのお父さんとのことをぽつりぽつりと話し始めた。


話し出すと、今まで親に言えなかった不満がどんどん出てくる。

それはどれも些細なことなんだけど、こんなに自分の中に溜まっていたのかと驚いた。

もしかしたらあたしは、柳に聞いてもらいたくてここへ来たのかも。


「……なるほどねぇ、たしかにちょっと成績下がったくらいで色々言われるのはウザいかもな」

「でしょ? これからもこんなだったらやんなっちゃう」

「そのたび家抜け出すわけにいかねぇしな。つーか、それだけのことで家出るなよ」

「だってー」


いたくなかったんだもん、とわがままを言うあたしはやっぱり子供か……。

コン、とグラスを置くと、ため息を吐き出してだらしなく頬杖をついた。

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