悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
彼は脱力感たっぷりの大きなあくびをして、眠たそうに涙目をしぱしぱさせながら言う。


「あー、まぁリカちゃんは美人だし上品だし、いかにもお嬢様って感じだけどさ。ひよこと違って」


だから一言余計だっつーの……と、眉毛をぴくりと動かすあたし。しかし。


「でもそれだけで、心が動かされるものがないんだよね」


その言葉に、妙に納得させられてしまった。

柳は軽い気持ちで付き合ったりしないんだもんね。


「“奪いたいって思うくらいの人じゃないと付き合えない”んだっけ?」

「筒抜けかよ、おい」


リカからあたしに暴露されたのだと知って、うなだれる柳がなんだか笑える。


「でも難しそうだねぇ、それって」

「……そうでもないけど」


え……そうでもない?

てことは、そういう存在の人がいるっていうこと?


柳を見やり、特に変わらない表情を確認した時、ちょうど電車がやってきた。

深い意味はない……か、今の。

でも、もしいるとしたら気になるな。

柳の心を動かす、奪いたいくらいの気持ちにさせる女子は、どれだけ素敵な人なのか──。

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