悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
ぎゃーぎゃーと言い合っていると、あたしの隣にいた亜美が険しい表情で口を開いた。


「ひどいよ、リカちゃん」


抑揚のないその声に反応して、あたしとリカは押し黙る。


「これがリカちゃんの仕業じゃないとしても、今までのことを考えれば本当に同罪だよ」

「亜美……」

「柳くんのことはショックだったと思うけど、それでひよちゃんに目くじら立てるなんて間違ってる。もう恨むのはやめなよ」


静かに、でもはっきりと、諭すように説得する亜美。

そんな彼女を一瞥(いちべつ)したリカは、吐き捨てるように小さな声を漏らした。


「……恋愛したことがない亜美に、そんな綺麗事言われたくない」


わずかに目を開く亜美を挑発的な目で見据え、リカは口調を強める。


「この上履きも、亜美がやってないっていう証拠はないでしょう? ひよりの味方してるのも、自分から疑いの目を逸らしたいだけかもしれないじゃない」

「ちょっと、リカ!」


亜美がこんなことするはずないよ。リカだって本当はわかってるはずなのに。

宥めようとするあたしと、傷付いたように眉を下げる亜美に、

「そんな偽善者じゃないといいけどね」

と冷たい一言を投げつけ、リカはその場を去っていった。

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