悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「うわ、やっぱりひよこだった」


目の前によく知ってるイケメンの姿があって、驚いたあたしはひゃー!とのけ反った。


「なっ、な、何で柳が!?」

「今日はばーちゃんの誕生日だからこれから行くとこなんだよ」


柳は有名な和菓子屋さんの袋を軽く掲げて言った。

そういえば、柳のおばあちゃんはここの大福が好物なんだっけ。おばあちゃん孝行、えらいなぁ。

向かいの家に住んでいても最近はほとんど会わないけど、元気でやってるみたいでよかった。


「そしたら、オバケみたいにどよ~んとしてる女がいると思って、よく見たらひよりっぽかったから」

「オバケって……」


あぁ、普段なら何か言い返してるはずだけど、やっぱり調子出ないな。

そんなあたしを見下ろしていた柳は、何かに気付いたらしく表情を硬くする。


「……どうしたんだよ、これ。ひよりの?」


指差されたのは、汚れたあたしの上履き。

その瞬間、はっとした。

こうやって柳と話しているところを、もしまた誰かに見られてたら、さらに厄介なことになるじゃない!


「ご、ごめん、あたし帰る!」

「あ、おい……!」

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