悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~

それからあたしは、興味津々な小学生達の視線を受けながら、柳に手を引かれて滑り台の裏側に移動した。

死角になるから、きっと誰かに見付かる可能性は低い。

二人で肩を寄せ合ってしゃがむと、柳がふっと笑みをこぼす。


「昔さ、遊んでたら急に雨降ってきて、こうやって雨宿りしたよな」

「そういえば、そんなこともあったねぇ」


あの頃はもっと広く感じた滑り台の下も、今ではさすがに窮屈だ。

懐かしい思い出に浸っていると、肩がくっつきそうなくらい近くに寄り添った彼が、唐突に核心に迫る。


「……何があったのか、俺にも言えないことなの?」


少し心配そうな視線を向けられて、あたしはどうしようか迷う。

言ってもいいかどうかはわからないけど……正直、やっぱり誰かに悩みを打ち明けたい。

その気持ちが勝って、あたしは重い口を開く。


「……こうやって柳と二人でいるのが、ちょっと気に食わない人がいてね」

「あー、もしかしてリカちゃん?」

「あぅ」


あっさりバレてしまった。そりゃわかるか……。

うなだれるあたしの心境を察してか、「大丈夫だよ、誰にも言わないから」と柳が念を押す。

< 150 / 292 >

この作品をシェア

pagetop