悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
腰を上げた柳は、滑り台の下から出て大きく伸びをする。


「さて、俺そろそろ行くわ」

「あ、うん。ごめんね、付き合わせて」

「いや。一緒にいない方がいいなら、お前は少ししてから帰れよ」


あぁそうだった、さっき自分で言ったのに忘れてた。

でも何だろう、なんか……

まだ、一緒にいたい。というか……。


「何かあったら、また話くらい聞いてやるから。めげるなよ」

「……うん、ありがと」

「じゃ、またな」


ひらりと手を振って、柳の微笑む姿が狭い視界から消えた。

追い掛けたい気持ちとは裏腹に、足は地面にくっついて離れない。

結局、あたしはその場に留まっていた。


一人になった隠れ家は、狭いはずなのに広く感じる。

柳と別れた後は、必ずわけもわからない切なさが込み上げてくるけど、今日はいつも以上に寂しい。

まだ一緒にいたいと思ったのも初めてだ。

……あたし、やっぱり柳のこと……


「好き──なの、かな」


ぽつりと言葉がこぼれると、急に心臓がドキドキし始める。

あたしは、しばらくそのまま動くことが出来なかった。




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