悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
◆*°もう少し悪いコトしてようか?
翌日、あたしはぼんやりしながら下駄箱の扉を開けて、目を見開いた。
「あれ!? 上履きがない! ……あ、昨日持ち帰ったんだった」
また嫌がらせかと一瞬ギクリとして、自分が手に持った袋の中にあることを思い出す。
一人コントみたいなことをしてしまった……。
「ひよちゃん、なんか今日ずっとぼーっとしてるけど大丈夫?」
一緒に来た亜美が、あたしの顔を心配そうに覗き込む。
大丈夫大丈夫、と笑いながら、洗ったものの薄汚れた上履きを取り出すあたし。
昨日、自分の気持ちに気付き始めてから、ずっと心此処にあらずな状態だ。
好きだと確信出来たわけじゃないけど、今までただの意地悪な幼なじみだと思っていたアイツが、突然あたしの中でその位置を変えようとしてるんだもん。
気持ちに頭が追い付いていかない。
「今日は何もされないといいね……」
物憂げな表情の亜美が、ぽつりと呟いた。
そっか、あたしの様子がおかしいと、亜美は嫌がらせが原因だと思って心配しちゃうよね。
「何されたってへこたれないよ!」
笑顔を作って明るく言うと、亜美も少し笑ってくれた。