悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
◇*°奪っていいのは俺だけ

十二月の冷たい空気が肌を刺す。

キュロットから覗いた脚は、タイツを履いていても防寒の意味はあまりない。

けれど、そんなことも気にしていられないくらい、今のあたしは急展開についていこうとするのでやっとだった。


「み、深山さん! どこに行くんですか?」

「んーそうだなぁ」


え、何も考えてない感じ?

手を繋がれて引っ張られるようにしてついていくあたしは、彼の思考がまったく読めなくて一抹の不安が過ぎる。

長い脚でスタスタと駅前の通りを歩く深山さんは、数メートル先を指差して「あ」と声を漏らした。


「そうだ、もうすぐクリスマスだからケーキでも買って一緒に食べようか」

「……ケーキ?」


深山さんの指の先には、レンガ造りの可愛い一軒家のようなケーキ屋が。

クリスマス仕様のイルミネーションと、店内から笑顔で出てくる人達に、不安は一瞬にして吹き飛ぶ。


あのお店のスイーツ、どれも甘すぎなくてめちゃくちゃ美味しいんだよね!

ケーキ食べるだけならいいか……そんなに時間もかからないだろうし。

甘い物に目がないあたしは、あっさりとケーキに軍配が上がった。

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