悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
◆*°二人で楽しいことしない?
小さなサンタクロースが壁を上り、青いトナカイがソリを引く。
円錐の形をした木にも無数のイルミネーションが輝き、街はクリスマスムード真っ盛り。
──しかし、あたしはそれとは別の、ピンクのネオンが煌々と照らす下にいた。
この建物……いわゆるラブホってやつ、ですよね?
初めてこんな間近で見たけど、意外にも可愛い外観……
じゃなくって!!
「ちょっと待ってください! 何でこんなとこに!?」
「そりゃあ、ヤることヤるために決まってるでしょ」
あたしの肩を抱いて平然と言い放つ男に、絶望的な心境に陥る。
だって、一つ上の先輩であるこの人とは数時間前に初めて会ったばかり。
あたしはまだキスも、男子と付き合ったことも、ましてや誰かを好きになったことすらないのに!
それなのに、何で全部飛び越えようとしちゃってるわけ!?
「大丈夫、ちゃんと優しくしてあげるからさ」
耳元にかかる白い息はかすかに温かいけど、あたしの背筋を凍らせる。