悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
……なんだ、それ。
まるでひよりが自分のモノみたいに言う秋史に少しカチンと来て、俺はヤツの瞳を睨み返す。
「何でアンタにそんなこと言われなきゃいけないわけ?」
「ひよりちゃんが大事だからだよ」
──ドクン、と胸の奥で重い音がした。
大事って……それはどういう意味でだ?
秋史は相変わらず柔らかな微笑を浮かべていて、その真意を読み取ることは出来ない。
雨の音がやけに大きく聞こえる一瞬の沈黙を、訴えるようなひよりの声が破った。
「秋ちゃん……! あたしは迷惑だなんて──」
「ひよりちゃん、帰るなら俺が送るよ。乗っていきな」
穏やかな笑みとは裏腹に強引な言葉で、秋史はひよりの手を取る。
華奢な身体は簡単にヤツの懐へ移動して、俺の隣には湿った空気が吹き抜けた。
立ち尽くす俺の手からそっとひよりの傘を取った秋史は、自分の黒い傘を俺の上に掲げる。
「傘、よかったらこれ使って」
優しげで綺麗な顔が、今は勝ち誇った悪魔のように見えた。
言いようのない苛立ちが込み上げるものの、今の俺にはどうすることも出来ない。
「……お気遣いなく」
「あ、柳……っ!」
強がりなセリフを吐き捨て身を翻すと、ひよりが呼び止める声を背に、雨の中足を踏み出した。
まるでひよりが自分のモノみたいに言う秋史に少しカチンと来て、俺はヤツの瞳を睨み返す。
「何でアンタにそんなこと言われなきゃいけないわけ?」
「ひよりちゃんが大事だからだよ」
──ドクン、と胸の奥で重い音がした。
大事って……それはどういう意味でだ?
秋史は相変わらず柔らかな微笑を浮かべていて、その真意を読み取ることは出来ない。
雨の音がやけに大きく聞こえる一瞬の沈黙を、訴えるようなひよりの声が破った。
「秋ちゃん……! あたしは迷惑だなんて──」
「ひよりちゃん、帰るなら俺が送るよ。乗っていきな」
穏やかな笑みとは裏腹に強引な言葉で、秋史はひよりの手を取る。
華奢な身体は簡単にヤツの懐へ移動して、俺の隣には湿った空気が吹き抜けた。
立ち尽くす俺の手からそっとひよりの傘を取った秋史は、自分の黒い傘を俺の上に掲げる。
「傘、よかったらこれ使って」
優しげで綺麗な顔が、今は勝ち誇った悪魔のように見えた。
言いようのない苛立ちが込み上げるものの、今の俺にはどうすることも出来ない。
「……お気遣いなく」
「あ、柳……っ!」
強がりなセリフを吐き捨て身を翻すと、ひよりが呼び止める声を背に、雨の中足を踏み出した。