悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「何なんだよ、アイツ……!」
思わず独り言が漏れ、乱暴に靴を履き変えた。
つい最近現れたくせしてひよりが大事とか、なに我が物顔してんだ。無性にイライラする。
濡れた髪や服を払いもせず校舎に入り、不機嫌さ丸出しの顔でずんずんと歩く。
自然と早足になって視聴覚室の前まで来ると、荒っぽくドアを開けた。
「おっかえりー! ちゃんとひよこちゃん見送って……ん? どーした?」
俺のギターを慣れない手つきで弾きながらニコニコしていた涼平は、異変に気付いたらしくキョトンとする。
いつもなら勝手に相棒をいじられたら軽くシメてやってるとこだが、今はそれどころじゃない。
「柳?」
相模も不思議そうに首をかしげる中、俺はテーブルに置かれたドラムスティックに手を伸ばす。すると。
「おいコラ」
俺の考えを見抜いていたサブが、数秒早くスティックを取り上げた。
不満げな顔をする俺に、サブは無表情のまま言う。
「また振り回す気だろ」
「頼むよサブちゃ~ん! 今ヤキモキしてるんです僕は」
「そういう時は酒でも飲んで寝ちまえ」
「サブ、発言がオヤジ」
ツッコミを入れた涼平は、力無くテーブルに腰掛ける俺の顔を覗き込む。