悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「お城で守られてるお姫様みたいなもんなんだよ、アイツは……」


独り言のように、ぽつりとそんな言葉がこぼれた。


昔話によくある、身分差の恋のようだと思う。

ひよりは近くにいても手に入れられない、周りの護衛に守られたお嬢様なんだ。

もしも、アイツにそこから飛び出る気があるとすれば、誰に非難されようと、俺は迷わずその手を引き寄せてやるんだけどな──。


ぼんやり考えていると、俺を取り巻いて物珍しげに見てくる三人の瞳に気付く。


「柳がなんか乙女チックなこと言ってるー」

「……ちょっと気持ち悪いな」

「サブ、ドラム貸してあげたら?」


む、と顔をしかめた俺は、口々に言う三人にしっしっと手を振り、「練習するぞ、練習!」と追い払った。



無心で指を動かすと、都合良く秋史の姿は消えていく。

代わりに脳裏に残るものは。

絹のようなセミロングのストレートヘア、くりっとした大きな瞳に、愛嬌のある厚めの唇──愛しい彼女の姿だ。


こんなことしか取り柄のない俺は、ひよりに相応しい男じゃないかもしれない。

それでも、これだけは断言出来る。

──アイツを想う気持ちは、誰にも負けやしない。




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