悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
◇*°俺が慰めてあげようか
5月も終わりが近付く今日、葉藍では春の体育祭が開かれた。
秋は球技だから、今回はリレーや騎馬戦、綱引きなどが行われる(もちろん本気で)。
皆が砂だらけになって校庭を走り回っているのを、あたしは亜美やリカと応援席に座って眺めていた。
「あ、秋史くんがいる」
「ジャージ姿の南澤先生も素敵~……♪」
皆を応援している珍しいジャージ姿の秋ちゃんを亜美が指差すと、リカはまたうっとりしている。
今日の秋ちゃんはまた一段と爽やかだなぁ。ほんと大学生みたい。
膝の上で頬杖をつくあたしも、彼をぼんやり眺めていた。
思い出すのは先々週の土曜日、雨の中を一人で去っていく柳の姿と、初めて乗った秋ちゃんの車の匂い。
『……秋ちゃん、あたしは本当に迷惑だなんて思ってないんだよ?』
一定のリズムで動くワイパーを眺めながら、隣でハンドルを握る彼に言った。
『柳にお願いされたのはね、文化祭のフライヤーのイラストなの。あたしもやってみたいって思ったんだ』
自分の意志なのだと伝えると、秋ちゃんはそのこととは違う質問をしてくる。
『……ひよりちゃんが恋してる相手って、もしかして柳くん?』