悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
秋ちゃんが何を言いたいのかは、やっぱり謎だ。

でもきっと、あたしにはわからない問題を抱えているんだろう。


複雑な気持ちで立ち尽くしていると、秋ちゃんは腕時計を見て、バッグから問題集を取り出す。


「こんなことしてちゃ教師失格だな。始めようか」


穏やかに微笑む秋ちゃんは、もういつも通りの優しげな先生。

あたしもなんとか頭を勉強モードに切り替えなくちゃ。



それから、タイミング良くお母さんが二人分の紅茶を持ってきてくれて、あたし達はお互いさっきまでのことは口に出さず、真面目に勉強に打ち込んだ。

けれど、やっぱり柳と秋ちゃんのことが邪魔をして、数式は頭に入っていかない。


……柳の言うことは、あながち間違いじゃなかった。

あの時もしキスを拒んでいなかったら、いろいろな歯車が狂ってしまっていただろう。

あたしは男の人のことも、秋ちゃんのことも理解しきれていない。

それなのにわかったようなフリをして、大口を叩いてしまった自分が情けない。


こんなあたしに、柳は呆れちゃったかな……。


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