悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「そんな話が信じられるわけないだろう。柳くんがそう言ったのか? お前が騙されてるんじゃないか?」

「違う! どうしてそんなに柳を悪者にするの!?」

「大崎さんの家は決して裕福とは言えないんだ、お金を盗んだって不思議じゃない。
御坂高校もこの辺りではレベルが高いわけではないし、荒れた生徒が多いって聞くしな。そこに通ってる彼の人間性もどうだか」

「ちょっとあなた……!」


たまらずお母さんが止めに入ったけど、今の発言は許せるものじゃない。

結局お父さんは、家柄や学歴で人の良し悪しも決めるの?

勝手に遠ざけて、ちゃんと柳の本質を見ようともしないで……!


堪えきれずに涙が溢れると同時に、怒りは頂点に達した。


「最っ低……!!」


ぐっと拳を握りしめ、唇を震わせながら吐き捨てると、二人がはっとしたようにあたしを見る。

泣き顔を上げて、ナイフみたいに鋭い睨みとトドメの一言をぶつけた。


「お父さんなんて、世界で一番大っっ嫌い!!」

「うっ」


グサッと胸を刺されたような顔をするお父さん。

知ってるんだから。昔からこれが一番効くフレーズだって。


「ひより!」


今までの雑言が嘘のように絶句するお父さんに代わり、お母さんが呼ぶ声を無視して、あたしは家を飛び出した。




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