悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
◆*°もう子供じゃない


こんなふうに手を繋いで歩くのはいつぶりだろう。

柳はあたしが泣いてたり落ち込んでたりすると、慰めの言葉も何もかけないけど、代わりに手を繋いで家まで帰ってくれたっけ。

意地悪ばっかりするくせに、たまにぶっきらぼうな優しさを見せてくれる……そんな人。



あたしの家の前の、小さな道路を挟んで向かい側にあるのが柳の祖父母の家。

小学校時代、共働きだった柳の両親の帰りが遅いからと、学校が終わるとその祖父母の家で両親が迎えに来るのを待っているようだった。

だから、家は近所ではないものの、あたしと柳は毎日のように一緒に帰っていたわけだ。


でも、それは小学校までのこと。

中学で離れてから、ほとんど柳の姿は見なくなった。

たまたまタイミングが合わないだけなのか、柳がずっと来ていないのか、理由はわからないけど。


今あたしの手を引く彼は、何の迷いもなく駅へ向かっている。

あたしの家があるのはここから三駅離れた住宅街だ。


「ねぇ、もしかして家まで送ってくれようとしてる……?」

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