悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
◆*°お前の唇も、奪っていい?
サッカーをする小学生や、犬の散歩をする人が通り過ぎていく、夕陽で朱く染まる公園。
何度も震えるスマホを無視しながら、あたしは小さなブランコに座っていた。
電話は家からに違いない。もう耳障りだし、お母さんにメールしておこうかな。
“お父さんのことは許さないけど、ちゃんと帰るから心配しないで”とメールすると、お母さんがうまく宥めてくれたのか、うるさい着信はとりあえずなくなった。
でも、ずっとここにいるわけにいかない。
結局、家から抜け出しても誰かを頼るしかないあたしは電話帳を開く。
と言っても、逃げ場になってくれる人は限られているけど。
「もしもし、亜美?」
『ひよちゃん! どうしたの?』
癒し系な彼女の声を聞くと、少しだけ心が安らぐな。
明るい声を作って、いつも通りに話す。
「突然ごめんね。ちょっと、これから会えたりしないかなーって」
『あ……ごめん! 今親戚のおばさんの家に来てて、東京にいるの』
「わ、東京!?」
『急に行くことになっちゃって。何か大事な用事だったかな?』
「あ、ううん! 暇が出来て遊びたいなーって思っただけだから」