悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
なんとか泣くのを落ち着けると、迷ったけどさっきあったことをすべて話した。

お父さんに進路を反対されたことと、柳のことを完全な偏見で悪く言っていたと。


「本当にごめんね……。お父さんがひどいことを……」

「まーしょうがねぇって。別に俺は恨んだりしてないから。それより、ひよりの進路の方が問題なんじゃねーの?」


しゃがんだまま頬杖をつく柳は、真剣な瞳であたしを見上げていた。

あたしはケーキの箱に目を落としつつ、正直な気持ちを打ち明ける。


「……お父さんが言うことも一理あるの。あたしはまだ何も具体的なことは調べてないから。
でも、頭ごなしに“絵の勉強なんかしてどうするんだ。ただの趣味だろ”って言われたのは、すごい悔しかった」


一度下唇を噛みしめると、「でもね」と言葉を繋げる。


「それより、柳の家庭や高校のことまで引き合いに出して、悪く言ってたことが本当に許せないの。お父さんだって、何も知らないくせに……」


あたしが落ち込んでいる時は励ましてくれて、リカとの仲を修復するきっかけもくれて。

趣味を追求するのは無意味なんかじゃないってことも、教えてくれた。

柳は、本当はこんなにも優しくて、寛大な心を持っている人なのに。

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