悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
自分のやりたいことを否定される以上に、大切な人をけなされるのは悲しいし悔しい。


「……しばらくお父さんには会いたくない」

「でも、帰らないわけにいかないだろ? 過保護なおじさんは心配して気狂っちまうぞ」


ワガママを言うあたしを、冗談めいた口調で諭す柳。

公園の花時計は午後6時になるところ。

さっきまで走り回っていた小学生も、いつの間にか姿を消している。

それでも一向にブランコから離れないあたしに、柳は小さくため息を吐きつつ立ち上がった。


「俺なんかといたってバレたらまた面倒だから、その前に帰──」

「イヤ!」


首を振って否定すると、柳は驚いたように目を開いてあたしを見る。


「イヤって、お前……」

「まだ帰りたくない」


アーモンド型の綺麗な瞳を見つめ返すと、とても自然に心の声を口にしていた。


「あたしは……柳と一緒にいたいの」



素直な想いを伝えた瞬間、なぜかまた視界が揺らめく。

そのおかげで、柳がどんな表情をしているかわからなくなった。

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