悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
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手を引かれて向かったのは駅。
でも電車に乗るわけじゃなく、どうやらバスに乗ろうとしているらしい。
「ちょうどよかった、あと10分で来るって」
「どこに行くの?」
「着いてからのお楽しみー」
イタズラっぽく口角を上げる柳の考えはわからない。
でも、繋がれたままの手のぬくもりと、あたしのワガママに付き合ってくれていることが嬉しくて……ドキドキする。
もう日は沈んでしまい、夕闇に包まれている空の下、あたし達を乗せたバスは市内を巡った後、坂道を上っていく。
次第に緩やかなカーブが続く道になり、緑や木々が多い景色に変わっていた。
やがて見えてきたのは、結構大きな公園らしきエントランス。
「ここ……すっごい昔に来たことあるかも」
あたしの言葉に柳がふっと笑みを浮かべたと同時に、バスが停まった。
外に降りると、緑が多いせいか、いつもより澄んだ空気を感じる。
目の前にあるのはたくさんの遊具と、緩い傾斜のある芝生の丘。
「あっちにとっておきの場所があるんだ」
丘の向こうを指差して言った柳は、再びあたしの手を取って、ライトに照らされる公園内を歩き始めた。