悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~

 *


手を引かれて向かったのは駅。

でも電車に乗るわけじゃなく、どうやらバスに乗ろうとしているらしい。


「ちょうどよかった、あと10分で来るって」

「どこに行くの?」

「着いてからのお楽しみー」


イタズラっぽく口角を上げる柳の考えはわからない。

でも、繋がれたままの手のぬくもりと、あたしのワガママに付き合ってくれていることが嬉しくて……ドキドキする。


もう日は沈んでしまい、夕闇に包まれている空の下、あたし達を乗せたバスは市内を巡った後、坂道を上っていく。

次第に緩やかなカーブが続く道になり、緑や木々が多い景色に変わっていた。

やがて見えてきたのは、結構大きな公園らしきエントランス。


「ここ……すっごい昔に来たことあるかも」


あたしの言葉に柳がふっと笑みを浮かべたと同時に、バスが停まった。

外に降りると、緑が多いせいか、いつもより澄んだ空気を感じる。

目の前にあるのはたくさんの遊具と、緩い傾斜のある芝生の丘。


「あっちにとっておきの場所があるんだ」


丘の向こうを指差して言った柳は、再びあたしの手を取って、ライトに照らされる公園内を歩き始めた。

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