悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
歩きながら周りを見回していると、所々見覚えがある場所があって、懐かしい感じがする。

やっぱりここ、前に来たことがある。

家族で来たんだっけ、と記憶を辿りながら歩いていると、柳は上に伸びている螺旋状の階段の前で足を止めた。


「はい、上ってー」

「え」


上れって……もう暗くなってきて足元見えづらいし、古びたむき出しの鉄骨がなんか心許ないんだけど。


「別に怖くないって。ほら、行け」


促されたあたしは、ためらいつつ渋々階段を上っていく。

ぐるぐると回りながら進み、てっぺんに到着すると。

目に映る景色に、少しだけあった不安は一気に消え去った。


「わぁ……すごーい!!」


一面に広がるのは、宝石を散りばめたような綺麗過ぎる夜景。

白、黄色、赤、青……家やビルのいくつもの光がキラキラと輝いている。

遮るものは若干の木だけで、180度見渡せるここは展望台だったんだ。


「な、とっておきの場所だろ?」

「うん……! 本当にすごいね!」


手すりに掴まって興奮しながら見下ろすあたしを、柳は満足げな顔で見ていた。

< 248 / 292 >

この作品をシェア

pagetop