悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「……あたし、守ってもらってばっかりでカッコ悪いな」

「いいんじゃねーの、お姫様は守られとけば」


何であたしがお姫様?

柳を見やると、お互いの視線が絡まり合う。


「ただ、守るのは王子様でも護衛でもない、ただのギター抱えた旅人でもいい?」


不敵な笑みを見せて言う彼に、あたしはぷっと吹き出した。

急にメルヘンチックになことを言い出すから面白い。

あたしにとって、柳は王子様も同然だけどね、と思いながら頷く。


「うん、旅人さんがいい、です……」


……言ってから恥ずかしくなって、また夜景に目線を戻す。

どうしたんだろう、今日のあたし。素直な気持ちをこんなに口に出せるなんて。


熱を持つ頬に手をあてたり、風になびく髪を耳に掛けたりしていると。

隣からクスッと笑う声が聞こえた。


「お前、ほっぺた汚れてるぞ」

「えっ!?」

「手すり触ってサビが付いたんじゃねーの? 手、見てみろよ」

「うわ、ほんとだ!」


両手を広げ、目を凝らして見てみると、たしかに手が汚れているのがわかる。

暗いし、全然気付かなかった……。

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