悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「きたねー。子供か」

「う、しょうがないじゃん……!」


笑いながら、あたしの頬を七分丈のTシャツの袖でゴシゴシとこする柳。

ちょっぴり乱暴なそれに、きっとブサイクだろう顔でぎゅっと目を閉じていた。


すると、拭くのをやめた彼の手が、顔に掛かる髪をそっと掻き分ける。

目を開けると、その手はあたしの頬を包み込むように添えられ、真剣に見つめてくる整った顔があった。


ドキン、と大きく心臓が跳ねる。

風の音と、自分の胸の鼓動しか聞こえないこの場所では、時間の流れも感じない。


その空間の中で、あたし達の間の空気が動いた。

艶っぽい表情の柳の顔が、鼻先が触れるほど近くに寄せられる。


「……お前の唇も、奪っていい?」



──ぞくりとするほどの甘い声とフレーズに、あたしの心臓は破裂寸前。


でも、拒む理由なんてない。

あたしだって、柳が欲しいから──。


今、自分が息をしているのかもわからないくらい緊張しながら、“YES”を表すようにゆっくり目を閉じる。

それと同時に、彼の唇が近付くのを感じた。

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