悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
◇*°何を言われても構わない
家に着いた時、時刻はすでに21時近くになっていた。
駐車場に、お父さんのものではない黒い車が停まっている。……秋ちゃんの車だ。
「秋ちゃん来てるんだ……あたしの居場所探すために、お父さんが連絡したのかも」
「ダブルで説教されんのか。だりぃ」
心底嫌そうな顔をする柳だけど、あたしもなんだかさらに気が重いよ……。
でも、もう逃げないって決めたんだから。
柳と目配せをすると、意を決して玄関のドアを開けた。
「……ただいま」
「ひより!!」
ダイニングに入ると、椅子に座っていたお父さんが飛び上がるように立って、こっちに近付いてくる。
同じく席についていたお母さんと秋ちゃん、大地もホッと胸を撫で下ろした様子。
しかし、あたしの後から姿を現した柳を見て、一瞬皆の表情が固まった。
「こんばんは。お邪魔します」
堂々と挨拶をした柳に、お母さんは慌ててぺこりと頭を下げ、大地は誰?って感じでキョトンとしている。
秋ちゃんは予想していたのか表情を変えず、鬼のような形相になるのはもちろんお父さんだ。
「無事帰ってきてくれてよかった……が」
あたしの隣に並ぶ彼に目線を移し、片眉を上げて見据える。