悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
い、いやいやいや!!

今、柳が言ったのは恋愛感情じゃなく、人として好きってこと……だよね?

勘違いするな、あたし!!


お父さんは目が飛び出そうなほどまん丸にして、他の三人も少なからずびっくりした顔をしているけど、柳はまったく気に留めず話し続ける。


「コイツが最近描いた絵、見たことありますか? すっげー上手いんですよ。趣味に留めておくのはもったいないくらい」


わずかに笑みを見せて言う柳につられたかのように、お父さんの表情も少しだけ緩む。


そういえば、お父さんにイラストなんて見せたことなかったな……。

なんとなく恥ずかしかったし、けなされたらと思うと嫌だったから。

大学を変えるとか言い合う以前に、お互いにもっと歩み寄らなきゃいけなかったのかもしれない。


「だから、文化祭で宣伝のためのビラを描いてほしいって頼んでたんです。ひよりの絵、たくさんの人に見てもらえたら素敵だと思いませんか?」


まさか、フライヤーを頼んだことにそんな考えも含まれていたなんて……。


柳を見やると、ちらりとあたしを見下ろして口角を上げた。

なんだか力が沸いて来るような感覚がする。

あたしも黙ってないで、ちゃんと自分の口で言わなきゃ。

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