悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「そっか……」


秋ちゃんが優しく笑いかけてくれて安心した。


「じゃあ……君は本当に身代わりになっただけなのか?」


まだ半信半疑な様子で問い掛けるお父さんに、柳は曖昧に頷いた。

秋ちゃんは微笑を浮かべて、授業の時のように穏やかに話す。


「柳くんのやり方が正しいとは言えません。でも、ひよりちゃん達のためを思って自分が罪を被って、ずっと誰にも言わずにいたなんて、男気がありますよね。なかなか出来ることじゃない」


秋ちゃんが柳を擁護してくれた……なんだかあたしまで嬉しい。

あたし達の間に立ち込めていた険悪なムードも、徐々に和らいでいく。

すっかり力が抜けてしまったようなお父さんは、呆れ顔で柳を見る。


「まさかそんなことをするとは……」

「俺の親にも本当のこと打ち明けたら、同じこと言って呆れてました。すいません、ややこしいことして。俺バカなんで」


ポリポリと頭を掻きながら言う、緊張感をなくした柳に、あたしも肩の力が抜けた。

秋ちゃんは笑いながら柳に言う。


「俺も今日までずっと騙されたままだったよ。その当時から柳くんに悪いイメージがついちゃってたんだ、ごめんね」

< 260 / 292 >

この作品をシェア

pagetop