悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
謝ってくれたのに、柳はなぜかむすっとした顔のまま。


「俺を目の敵にしてた理由はそれだけじゃないだろ」

「さぁ、どうかな」


意味深な笑みを見せる秋ちゃんに、じとっとした目線を送る柳。

なんだろう……二人にしかわからない何かがあるのかな。

首をかしげていると、「柳くん」とお父さんが呼んだ。そして。


「……何の罪もない君に、ひどいことを言ってすまなかった」


そう、謝ってくれた。


あぁ、ようやくちゃんと和解が出来たんだ……本当によかった。

ちょっぴり感動しながら顔をほころばせていると、柳も柔らかな表情で言う。


「いえ。俺がやったことにしたんだから、文句言われるのも当然ですし。ま、こんなに大事(おおごと)になるなんてあの時は思ってなかったけど」

「大事にもなるだろ~! 目に入れても痛くない娘のことなんだから!」


あーあ……また始まったよ、お父さんの過保護っぷり。

でももういい加減、子離れしてもらわないとね。


気楽に話すようになってくれたお父さんと柳を見ながら、あたしは安堵の笑みをこぼしていた。


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