悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
それから、秋ちゃんが柳を家まで送っていってくれることに。
柳に負けたようで悔しかったのか、お父さんは「もう寝る」と言って大地と部屋に向かってしまい、お母さんが玄関まで見送りに来た。
「柳くん、うちの人が無神経なこと言って、嫌な思いさせて本当にごめんなさいね」
「いえ。ひよりのことを大切に想ってるからこそだってわかってるんで」
改めて謝るお母さんに柳は笑って首を振り、秋ちゃんと一緒に外へ出る。
ドアが閉まる直前、彼とぱちんと目が合った。
展望台でのことを思い出して、忘れていた胸の高鳴りが蘇る。
あーもう、どうしよう。
お父さんとのことは一件落着したけど、柳のことを想うと眠れそうにないよ。
まだ残っている恋の問題を抱えつつダイニングに戻ると、柳がくれたケーキの箱を眺めるお母さんがこう言った。
「進路のこと、ひよりがそんなふうに考えてるなんて知らなかったわ」
「ごめん、なんか言いづらくて……」
お父さんはまだしも、お母さんになら相談出来たよね。
今さらそんな簡単なことに気付く自分の浅はかさに呆れる。
でも、お母さんはあたしを責めることなく、いつもの優しい笑みを浮かべた。