悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
◆*°不安にさせるようなことはしないから
Side*大崎 柳
ひよりの家を後にした俺と秋史は、口数少なく車に乗り込んだ。
無事おじさんを説得することが出来て、だいぶ気持ちが軽くなったけど、秋史と二人の密室空間はやっぱり息が詰まる。
しばらく無言で、窓の向こうに流れる夜の街を眺めていると。
「……さっきの君の考えは当たってるよ」
突然、秋史がこんなことを言い出した。
俺は運転席に顔を向け、首をかしげる。
「さっきって?」
「柳くんを目の敵にしてたのは、俺がひよりちゃんに対して特別な想いがあったからなんだ」
あぁ、そのことか……。
やはり秋史がライバルなのだと確信して、心の中で舌打ちしていると、意外な言葉が返ってきた。
「でもそれは、本物の恋愛感情とはちょっと違ってね」
「え?」
「俺、家庭教師やってた生徒の女の子を好きになったことがあるんだ」
──一瞬、車の中の空気が止まった。
あの秋史が……生徒に恋!? 意外過ぎだろ!
驚きで声が出ない俺に、彼は平然とした様子でハンドルをきる。
「まだ大学生の時、バイトで高校生相手に家庭教師をやっててね。その子は裕福な家のお嬢さんで、性格もひよりちゃんに似てた」