悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~

 *


お互いテストが終わるまで、ひよりと会うことはなかった。

俺はテストの出来はたいして気にしていないが、ひよりは前より点数がよかったらしく、ホッとしたとラインで言っていた。


そんなアイツがスロースにやってきたのは、7月に入ってすぐのこと。

完成したというフライヤーを見て、下書きからかなり進化した、その完成度の高さにすごく驚いた。


マイクを握って顔半分が隠された男の上半身と、隣には俺の相棒と同じ形のエレキギターが前面に描かれ。

空いたスペースに開催日時やバンド名が、音符やドラムのパーツに囲まれて記されている。

その歌う男がマジシャンみたいなハットとタキシードを身につけ、目の下にダイヤのマークを入れているのが、ひよりなりにバカっぽさを出しているのだとか。

あえてモノクロにされているが、皆の目を引くに違いないイラストは、俺達が望んでいた以上の出来だ。


これを見た瞬間、感動でついひよりを抱きしめそうになったけど。

いくら俺が何してたって気にしない客ばかりだと言っても、店内で熱い抱擁をするのは控えたよ、さすがに。

< 267 / 292 >

この作品をシェア

pagetop