悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~

惚けていたリカをなんとか現実に引き戻し、あたし達はさっそく体育館の中へ入った。

すでに演奏が始まっていたけど、一年生のバンドだからか満員というほどではない。

人の波をくぐって、ステージに近い場所をゲット出来た。


しばらく演奏を聞いていて、亜美が小さな声で一言。


「申し訳ないけど……やっぱり差は歴然だよね」

「出た、亜美の毒舌」


可愛い顔してハッキリ言うんだからこの子は。

でもたしかに、柳達と比べちゃうと明らかに違う。

うまく説明出来ないけど、ユアフールは歌も演奏も、他のことなんて考える余地がないくらい聴き入ってしまうんだ。


その後に続いた二組のバンドも、上手ではあるけど柳達を超えるほどではないと思った。

次はいよいよユアフールの番。

鼓動が早まるのを感じていた時、ちょっとした変化に気付いた。


「なんか、急に人多くなってきたね?」

「うん、いつの間に……」


あたし達の周りはたくさんの人でひしめき合っていて、どんどんステージ側に押されてきている。

隙間はまったくなく、体感温度もどんどん上がってきて、柳が言った通りかなり暑い。

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