悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
『こんにちは。ユアフールです!』


涼平くんのいつもの挨拶に、きゃーっと女子の歓声が上がる。

本当に大人気だなぁ……やっぱり皆は、あたしとは違う場所にいる存在だ。


だけど、手が届かないような寂しい感情は、もう湧いてこない。

──きっと、あたしも彼らと同じ、大切なものを見付けたから。


『たくさん集まってくれてありがとう。これからやる曲は皆の前では初披露です』


いえーい!と男子陣の声も上がる。男女ともに人気があるところがまたすごい。

『ちなみにアイツもハモるから』と涼平くんが指差した方を見ると、表情を変えずに柳が小さく頭を下げた。

またまた上がる歓声。


「へぇー、柳くんも歌うんだ!」

「ね、初耳」


たしかに柳の前にもマイクスタンドが立ててある。

どうしよう、ワクワクドキドキし過ぎてテンションがおかしくなりそう。


頑張ってー!と応援する声が飛び交い、それにつられてあたしも息を吸い込んだ。


「柳がんばれー!」


あたしの小さな叫びなんて、皆の声に混じればステージにいる柳に届くはずがない。

そんなはずない……のに、彼の視線がこちらを向く。

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