悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
どよめきが収まらない体育館を出ると、太陽は西に傾いていて、カラッとした暑さに包まれた。
柳はあたしの手を離すことなく、どこかへ向かって走る。
「ねぇ、どこ行くの!?」
「わかんねー。とりあえず二人きりになれるトコ」
う……相変わらずテキトーな柳だけど、さっきからドキドキさせられっぱなしだ。
一般の人も入り乱れている中ではそこまで大きな注目は浴びず、校内を出ることに成功。
校舎の裏手の道を少し歩くと、広い敷地に大きな丸い形の建物が現れる。
これはたしか、市が運営している総合体育館だ。
綺麗に整備された広場を歩き、大きな木の下にいくつか並んだベンチのそばにやってきた。
「ここでいいか。日陰だし、体育館使ってない日は全然人来ねーし」
「あ、そ、そうなんだ……」
なんか、なーんにもなかったように平然としてるけど……さっきの夢じゃないよね。
頭はまだパニック状態のまま、ほっぺたをつねりたくなっていると、柳がぱっと手を離した。
「俺、汗くさいよね?」
「へ?」
「てか、手も汗びっしょりなのに繋いじまった」
「や、それを言ったらあたしもだし…………って、そうじゃなくて!」
あたしがしたいのは汗の話じゃない!