悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「でも、先に奪ったのはひよりだからな」

「えっ!? あたしが何を……」

「ココ」


ちょんちょん、と柳が指差したのは、自分の心臓のあたり。


「俺の心は、ずっと昔からお前に持ってかれてたよ」


うそ……そんなに前から、柳はあたしのことを想ってくれていたの?

それなのに、ずっと気付かなかったなんて。

柳のこと、ただの手グセの悪いいじめっ子だと思ってた頃の自分に教えてあげたいよ!

あたしは、こんなに愛されているんだよ──って。


「ごほうび……ねだろうと思ってたけど、そんな必要なくなったみたい」

「え、何が欲しかったの?」

「…………柳からの、愛」


ってあたし、めちゃくちゃ恥ずかしいこと言ってるー!!

沸騰するくらい熱い顔を俯かせると、一瞬キョトンとした柳はぷっと吹き出して、照れたようにはにかんだ。


「そんな可愛いこと言ってると襲うぞ」

「ひゃ!?」


リストバンドをした手があたしの腕を掴み、ぐいっと引き寄せる。

片手で頭を包むように軽く抱かれ、まったく不快じゃない、汗ばんだ男のコの匂いに包まれる。

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