悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「そんなのごほうびじゃねーじゃん。いつも与えるものだろ」


……当然のように言うけど、そんなふうに言えるのってスゴいことだと思うよ?

嬉しさと幸福が積もりに積もって、もう本当に死んでもいい!って思うくらいだけど。


目線を上げると、すぐ間近に柳のすっと通った鼻筋が見える。

色っぽさを感じる熱い眼差しに、捕らわれる。


だ、だめだめ! この雰囲気……キス未遂の時と一緒だもん!

いつ誰が来るかわからない、こんな人様の目につくところで~!


「ひより──」

「あっ! じゃあギター教えてよ!」

「あぁん?」


胸を軽く押して顔を離すと、柳はおもいっきり不機嫌そうに据わった目であたしを見る。

怖い、コワイ!


「ほら、前教えてくれるって言ったじゃん! 今ちょうどギターあるし」

「……アンプとエフェクターがなきゃほとんど音出ないけど」

「う、うん? そうなの?」


ありゃ、いい切り抜け方だと思ったのに。

何のことやらわからず首をかしげると、ため息を吐いてチッと舌打ちした柳は、「じゃ、さわりだけな」と渋々ギターケースを肩から下ろす。

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