悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
目線を泳がせてどぎまぎしていると、今度は突然鼻をつままれた。

息が止まって目を丸くするあたしに、冷静な顔をした柳が一言。


「あんまり知らない男の甘いセリフは、こうやって鵜呑みにするなよ。さっきみたいに騙されるのがオチなんだから」


……あぁ、なんだ、それを忠告しようとしたのか。

でも、“あんまり知らない男の”ってことは、柳のセリフは嘘じゃないんだよね?

指を離す彼に、きっと真っ赤なお鼻のトナカイ状態になっているだろうあたしは、マヌケな顔のまま確認する。


「……柳が言ったことは鵜呑みにしていいわけ?」

「俺が正直なのはお前も知ってるだろ」


たしかに、柳は良くも悪くも正直だ。

意地悪はたくさんされたけど、嘘をつかれたり騙されたことは一度もなかったと思う。

ということは。“いい女になってきた”ってセリフは、本心なのか……。

ぎゃー、やっぱりすごく恥ずかしい。それに……素直に嬉しい。


駅のホームに近付いてゆっくりになる電車の揺れのように、あたしは心地良いドキドキ感に包まれた。


「うわ、指に鼻水ついた」

「鼻つまんだりするからでしょうが!」


こいつのこういうデリカシーがないところはすっごく嫌だけどね!!


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