悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
電車を降り、いつもの通学路を歩く。
でも今日は一人じゃない。
隣に誰かがいてくれるだけで、寒い風を除けてくれるんだなぁなんて、当たり前のことにふと気付いたりして。
ちょっとだけ、心があったかくなった。
けれど、いつもよりも早く家の前の通りに来てしまった気がする。
もうすぐ、またお別れだ。
「ひよこのおじさん、おばさんは元気?」
あたし達の家の数メートル手前で、ギターケースのストラップを肩に掛け直しながら、柳が問い掛けた。
「うん、相変わらずだよ。柳は、たまにはおじいちゃんおばあちゃんに会いに来てるの?」
「んー、あんまり。暇さえあればギターの練習してるからな」
淡々と答える柳に、あたしは眉をひそめる。
「それじゃ二人とも可哀相じゃない」
「……来たくても来ちゃいけねぇからな、俺は」
「え?」
独り言みたいに小さく呟いた言葉も、夜の静寂の中では聞き取ることが出来た。
来たくても来ちゃいけないって、どういうこと?
首をかしげるあたしに、柳は薄く笑みを浮かべて言う。