悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「そういや、藤沢とは今も仲良くやってるか?」


コロッと話題が変わったことに一瞬戸惑うけれど、あたしの脳もそちらに切り替わる。

藤沢(フジサワ)とは亜美のこと。

小学校時代、あたしと一緒にいた亜美は必然的に柳とも仲が良くなって、男子が苦手な亜美でもこの人だけは唯一普通に話せる男子だった。


「うん! 今日の合コンも一緒に行ってたんだ」

「へぇ。男嫌い直ったの?」

「そういうわけでもなくて……人数合わせ的な」

「ふーん。ま、あいつも元気にやってんならいいや」


安心したような微笑を漏らす柳を見て、なぜか胸にチクリと針が刺さったような痛みを感じた。

柳が亜美のことを気にしていたって全然おかしいことじゃない。

それなのに、何であたしはちょっとモヤモヤしているんだろう。


「……じゃ、早く家入れよ」


あたしの背後に建つ、モデルハウスみたいなわが家を顎でさし、柳もおじいちゃん達の家へと向かおうとする。

あ、行っちゃう──。


「──柳!」


大きなギターケースに覆われた背中に、あたしはとっさに声を投げ掛けていた。

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