悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
一人になった冬空の下はとても寒くて、あたしは逃げ込むように門をくぐって家の中に入った。
まだ消えない寂しさを抱えたまま、玄関でスリッパに履き替えリビングに向かう。
「ただいまー……」
「ひより! 遅かったじゃないか、心配したぞ!」
あたしがドアを開けた瞬間に声を上げたのは、ちょっぴり過保護なお父さん。
リビングをウロウロしていたお父さんは、慌ててこっちに駆け寄ってくる。
「今日は友達と遊んでくるからたぶん遅くなるって言ったじゃん」
「もう20時半過ぎてるんだぞ!? こんなに遅くなるとは思わないだろう。電話にだって出ないし……!」
「電話?」
そう言われて、ずっとスマホを見ていなかったことを思い出す。
確認してみると、お父さんからの着信がずらりと並んでいた。うーわ。
「ごめん、気付かなかった」
「まったく、何のための携帯だか。ちゃんと連絡くらいはしなさい」
「はーい……」
高校生になっても、親にとってはいつまでも子供。
だから心配するのは当然なんだろうけど、やっぱりいろいろ面倒臭い。
早く自立したいな……。