悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
再び腰を下ろすお父さんの向かい側には、弟の大地(ダイチ)が座って黙々と勉強をしている。

ようやくノートから顔を上げた大地は、あたしに向かってにこっと屈託のない笑顔を見せた。


「ひよちゃん、おかえり!」

「ただいま。宿題やってるの?」

「んーん、この間の授業の復習だよ」

「ふ、復習……」


そんな単語、よく嫌がらずに言えるな……。

小学5年生の少し歳が離れた大地は、あたしと違ってものすごい勉強家。

性格も明るくてとっても可愛い弟なんだけど、勉強が出来るおかげで、『ひよりも大地を見習え』と逆に言われることもしばしば。

姉が弟にプレッシャーを感じるとか、なんか情けないけど。


「ひよちゃんがこんなに遅く帰ってくるの珍しいね」

「そうだっけ?」

「うん。もしかしてデート!?」


興味津々な様子で聞いてくる大地の言葉に、ゴルフ雑誌を読み始めたお父さんが反応してバッと顔を上げた。

鬼のような険しい形相であたしを見るお父さんから目を逸らし、あたしは必死に首を横に振る。


「ちち違う違う!! 亜美とリカと遊んでただけだから!」

「ほんと~?」

「ホントホント!!」

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