悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
大地ってば、お父さんが疑うようなこと言わないでよ! 合コンだったってことも極秘にしてあるんだから!

無言で疑惑の眼差しを送ってくるお父さんを見て見ぬフリをしていると。


「おかえり、ひより。夕飯どうする? シチューあるわよ」


キッチンのカウンターから、こっちの様子を知ってか知らずか、お母さんがのんびりした声を掛けてきた。

助かった……! そしてシチューという単語を聞いただけでお腹がぐぅと鳴く。


「あ、うん、食べようかな!」

「じゃあ先に着替えてらっしゃい」

「はーい」


にこりと微笑むお母さんに笑顔を返したあたしは、お父さんと目を合わさないまま、そそくさとリビングを出た。


危ない危ない。合コンどころかラブホに連れ込まれそうになったなんてことがバレたら、お父さん発狂するだろうな。

それに、一緒に帰ってきたのが柳だと知ったら、きっとそれも小言を言うに違いない。

昔からあたしに悪さをする柳のことを良く思っていなかったようだから、なおさら。


あたしが中学から女子校に入ることになった、原因の一つがこれでもあるのだ。

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