悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
あたしは昔から絵を描くのが好きだったけれど、最近はこういう絵よりも可愛いイラストを描く方が好きになっていた。

将来、雑誌や本の表紙を飾るイラストレーターなんてなれたら素敵だなぁ……と、密かに憧れていたりもする。

そのために、附属の大学ではなく専門学校へ通いたいという想いもある。


だけど、お父さんの会社に入るか、有名企業に入社してほしいと考えている両親には、こんな現実味のない夢は話すことは出来ない。

才能がないと出来ない仕事だし、自分に向いているかもわからない。


『好きなことに夢中になれるのは、きっと今だけだぞ』


さっきの柳の言葉が頭の中を巡る。……けれど。

趣味に没頭したからって、それが将来何かの役に立つとは思えない。あたしにとっては、ね。

夢を捨てたくないし、好きなことをやりたい気持ちはあるけれど、その一歩を踏み込む勇気が出ないんだ。



複雑な想いを抱えながら窓際に立ち、カーテンに手を掛けた。

外には柳の祖父母の家が見える。

今、すぐそこに柳がいると思うと、なんだかちょっともどかしいけど。


「……寂しくなんかないもん」


言い聞かせるように呟いて、いつもはついていない部屋の明かりを気にしつつ、あたしはカーテンを閉めた。




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