悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
狭い空間に堅いソファー、ほの暗い照明。
ガラスのテーブルにはジュースのグラスが並び、ひたすらBGMが大音量で流れている。
ここはカラオケボックス。
女子校育ちのあたし達は、今日初めて潜入した禁断の場所だ。
「はい、次は誰歌うー?」
3人で肩を寄せ合い、まさにだんご3兄弟状態で固まってソファーに座るあたし達に、長めの茶髪男子がマイクを向ける。
一瞬目を見合わせ、あたしの左側に座るリカが、「は、はーい♪」と肩をすくめて可愛らしく手を上げた。
出たよ、リカの猫なで声。普段の彼女から、こんな声は聞いたことがない。
まぁ今は合コンの最中で、彼女も必死に“女の子アピール”をしなきゃいけないからいいんだけど。
「リカちゃん、何歌うの?」
「うーん、ど、どうしようかなぁ~」
ぴったりとくっつくように座り、ニコニコと話しかけてくる男子に、リカの身体は若干引き気味になっている。
リカ……笑顔がぎこちないよ。