悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
『でさ、お前来週の水曜は何か予定ある?』


突然聞かれてキョトンとするあたし。どうやら本題はこれらしい。

来週の水曜はクリスマスイブだ。寂しいことに、特に予定はない。けど。


「え……水曜って、何で?」

『俺らが部活やるの、その日が今年最後なんだよ。あ、お前はバンドなんて興味ないか?』


あぁ、例のギターの練習風景を見に行くって話ね。

あたしだって一応、柳がどんな姿でやっているのか興味はある。


「そんなことない、見たいよ。でも、さっきもう年内はやらないって言ってなかった?」

『あれはスタジオでの話。部活は高校でやるから、見に来いよ。お前オンリーで』


“お前オンリー”? ……って!


「あたし一人で来いってこと!? なんで!?」

『一番先に見せたいんだよ、ひよりだけに』


──きゅうっと、胸が鳴き声を上げた。

喉の奥まで締め付けられて、声が出てこない。


『なんとなくな』と、ゆるい感じで言う柳だけど。

“ひよりだけ”なんて言われると、特別扱いされているようで……悪い気分はしない。


『嫌?』

「や、じゃない、けど……他校のあたしなんかが入り込んだらダメでしょ?」

< 60 / 292 >

この作品をシェア

pagetop