悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
部活で対校試合があるとかなら別だけど、と思いながら言うと、柳は余裕そうに笑う。


『大丈夫だよ。俺らの高校って制服あるけど着用自由で、私服で来る人も結構いるから』

「それでもさすがに見知らぬ人はわかるんじゃ……」

『小心者だなー。しょうがねぇか、ひよこだから』


バカにしたような素っ気ない口調で言われ、ムッとするあたし。

くそぅ……鳥かごを飛び出す勇気のない、ひよこのままだと思われてたまるか!


「わかったわよ、私服着て行ってやるわよ!」

『おーし、決定』

「そのかわり、ハンパな演奏してあたしをガッカリさせないでよね」


かなり上から目線な発言をすると、電話の向こうで一瞬黙った柳が、ふっと笑ったのがわかった。


『上等だ。覚悟してろよ?』


その声が、ぞくりとするくらい自信に満ちていたから、もしかしたらあたしはとんでもないことを言ってしまったのかも、と思うくらいだった。


……でも、いつも脱力感を漂わせている柳だもん。

ギターを持ったからって、それが変わるはずないでしょう。


そうタカをくくるあたしは、半ばヤケになって柳と過ごすクリスマスイブの予定を入れたのだった。




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