悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
数回瞬きをして、先に口を開いたのは柳。


「……相変わらずどんくさいな」

「ちょ、ちょっとバランス崩しただけじゃん!」


ぎこちなくなるあたしとは違って、柳はいたって平然としてる。

どうしよう、あたし今絶対顔赤い。

っていうか、早く離れてー!


なぜかカチカチに固まって動けなくなっていると、ぷっと笑った彼がこんなことを言う。


「見てて飽きねーひよこだな。ペットにしたいわ」

「なっ……!」


ぺ、ペット!?

一瞬脳裏をよぎる、ふわふわの黄色いひよこになった自分が、柳の手の平の上でなでなでされるファンタジックな妄想。

完全にバカにされてる!

……なのに、ドキドキしてるあたしって何なの?


不可解な自分の心理に首をかしげつつ、柳の手に引かれて立ち上がった。

何事もなかったように、再び皆のもとへ戻る彼。

……そりゃ何とも思わないよね、ちょっとした事故だし。

でもあたしは、腰に回された力強い腕の感覚がまだ残ってるよ──。


その後しばらく続く練習風景でも、あたしは柳のことばかり目で追ってしまっていた。


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