悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
練習が終わると、軽音部の人達に見つかる前に、一足早く柳と一緒に教室を出た。バス停まで送ってくれるらしい。
涼平くん達は「またいつでも遊びに来てね!」と言って、笑顔で見送ってくれた。
「すっごい楽しかった~。なんかハマっちゃいそう」
「来てよかっただろ?」
当たり前のようにまた荷物を持ってくれている柳の隣で、あたしは大きく頷いた。
この時間にバスに乗る人はまばらで、校舎内にいる時ほど人の目は気にならない。
すでに真上に広がっている星空を見上げて、白い息を吐き出す。
「でも、皆住む世界が違うなーなんて思っちゃった。好きなことに夢中になれるって、やっぱり幸せなことだよ。あたしとは違う……」
今日はとっても有意義な時間を過ごせたけれど。
柳が遠い存在に思えて、自分だけ置いてきぼりにされたようで……ほんの少しだけ、切ない気分にもなった。
すると、冬の冷気のようにきりりとした声が響く。
「そんな寂しいこと言うなって」
隣を見やると、柳は真剣な表情であたしを見据えていた。