悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「俺とお前は何も変わらねぇよ。住む世界も、見てる景色も。
ただ、俺達は“飛び込み禁止”って書かれたプールに飛び込むようなバカだってだけ」

「プールに飛び込む……?」


よく意味がわからなくて首をかしげると、柳は遠くを見るような目をして話し出す。


「いつかの英語の授業で、“あなたの将来の夢は何ですか?”って聞かれた時に、俺が“一生ギター弾く”って答えたら、先生に“You're fool!(バカねぇ)”って笑われたんだよ。
俺的には結構本気だったんだけどさ」


声を高くして先生のマネをする柳に、ちょっとだけ笑ってしまった。

でも、彼の興味深い話にしっかりと耳を傾ける。


「俺も他の皆も、暇さえあれば練習してるんだ。
涼平もサブも、親に“バンドなんかやってないで勉強しろ”って注意されてて。相模も“そんなことやってると成績下がるぞ”って嫌な顔されるらしいけど、それでも皆好きだからやめられないんだよ」


そうなんだ……。

皆、親や周りの反感を買っても、自分の意志を貫いているんだね。

あたしはダメだと言われたらそこで留まってしまう。

飛び込み禁止のプールに飛び込む勇気がない、臆病者だ。

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