悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~

駅からスタジオまでは徒歩10分ほど。

あの忌まわしい思い出が蘇るラブホ街は若干近道になるらしいけど、今日は健全な通りから向かった。


一見カフェのような小洒落た建物に入っていく柳と涼平くん。

後に続いて中へ入ると、ギターが飾られた雑貨屋のようなロビーがあり、二人は顔なじみらしい店員さんと和気あいあいと話しながら受付を済ませていた。

ここがスタジオなんだ……想像していた感じとは違った雰囲気でびっくり。


「なんかオシャレな所だね」

「そうかもな。ここ学割があるし良心的だから、俺達も一番気に入ってんだ」

「今日は皆が見に来るっていうから、いつもより広い部屋取っといたんだよ」


柳や涼平くんと話しながら興味津々に階段を上ると、いくつかの部屋がある。

プレートに“CStudio”と書かれたドアを開けると、橙色の明かりに包まれた閉ざされた空間が広がった。


部屋の隅には数人分の丸椅子と小さなテーブルがある。

一段高くなったステージにはすでにドラムやたくさんの機材がセットされていて、私が会うのは二度目の、相模くんとサブさんが待っていた。

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