悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~

 *


「すごかったぁ……!」

「ねっ!」


何曲か立て続けに演奏してくれた後、食い入るように見て、聞いていた亜美が、頬を紅潮させながら拍手した。

あたしも同じく。

この間より空間が狭いせいか、ここがスタジオだからなのかわからないけど、前よりすごく音が大きく響いて驚いた。

でも迫力があって、やっぱり何度聞いても素敵!


「もっと大きなライブハウスとかで聞きたい!」

「俺達もやりたいんだけどな。つーか、ひよこはたぶん回りのノリにもみくちゃにされるぜ」


意地悪そうに口角を上げる柳にあたしがムッと頬を膨らませると、亜美もユアフールの皆も笑った。

彼らが各々練習したり休憩し始めると、やけに左隣が静かなことに気付く。


「リカ、ますます柳に惚れちゃったんじゃ……リカ?」


こそっと聞きながら見やると、リカはなんだか呆然としている。


「どうしたの?」

「こ、これがバンドっていうものなのね……! 私には迫力がありすぎて……びっくりしっぱなしよ」


大きな目をぱちくりさせる彼女に、あたしは思わず吹き出してしまった。

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