悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
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「すごかったぁ……!」
「ねっ!」
何曲か立て続けに演奏してくれた後、食い入るように見て、聞いていた亜美が、頬を紅潮させながら拍手した。
あたしも同じく。
この間より空間が狭いせいか、ここがスタジオだからなのかわからないけど、前よりすごく音が大きく響いて驚いた。
でも迫力があって、やっぱり何度聞いても素敵!
「もっと大きなライブハウスとかで聞きたい!」
「俺達もやりたいんだけどな。つーか、ひよこはたぶん回りのノリにもみくちゃにされるぜ」
意地悪そうに口角を上げる柳にあたしがムッと頬を膨らませると、亜美もユアフールの皆も笑った。
彼らが各々練習したり休憩し始めると、やけに左隣が静かなことに気付く。
「リカ、ますます柳に惚れちゃったんじゃ……リカ?」
こそっと聞きながら見やると、リカはなんだか呆然としている。
「どうしたの?」
「こ、これがバンドっていうものなのね……! 私には迫力がありすぎて……びっくりしっぱなしよ」
大きな目をぱちくりさせる彼女に、あたしは思わず吹き出してしまった。